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作:仲井美樹
人物:
健斗(26)会社員
紗南(23)健斗の恋人
健斗「おれは、あれを運命だと思った。あの日の応募要項。面接が終わったあと確信した。これで、東京にいる彼女の元へ行ける! 神様が背中を押してくれている!……そんなことを思ったんだ……」
「近いのに遠いから僕は泣いている」
健斗「なのになんでなんだぁぁ!(音が割れる)」
紗南「けんちゃん、うるさい。カメラにつば飛んない?顔歪んで見える」
健斗「え、まじで」
紗南「あーあー服で拭いてるー」
健斗「紗南はは寂しくないの?」
紗南「寂しいけど、正直何にも変わってないし」
健斗「おれがんばったんだよ」
紗南「知ってる」
健斗「紗南に会いたいなんて行ったら、選考落とされるから、しっかり他の理由考えて」
紗南「知ってる。その理由考えたのあたしじゃん」
健斗「その節はありがとう!だから合格しました」
紗南「(棒読みで)おめでとー」
健斗「なのになんでなんだぁ!」
紗南「だからさー、海外みたいに外出したら罰がくだるわけじゃないんだから、会えばよくない?けんちゃん嫌なら、私が行こうか」
健斗「やめろ!外にでるな!」
紗南「大丈夫だって」
健斗「ダメだ!紗南を危険には晒せない」
紗南「スーパーは行ってるよ」
健斗「玄関前に置いてる分じゃ足りないのか?」
紗南「女は色々買わなきゃいけないものもあるの」
健斗「言ってくれればおれが買うから」
紗南「いいよ!てか、やだよ!」
健斗「紗南を危険に晒せない」
紗南「危険って……ていうか、うちに来るなら家に入ってけばいいでしょ。なんで顔も見ずに帰るのよ」
健斗「顔なら見てる。紗南が荷物を受け取ったのを確認してから帰ってるから」
紗南「ストーカーか」
健斗「いいんだ、紗南が元気にしているのを見るだけでおれは満足だ」
紗南「あたしは会えてないんですけど」
健斗「だから、こうしてビデオチャットをしているんじゃないか」
紗南「そうじゃなくて、せっかくはるばる北海道から上京してきたんだから、会おうって言ってるの。なんのための転勤よ」
健斗「ありがとう、会社。これで紗南といつでも会え……ないいいいいいいいいい」
紗南「だからー」
健斗「でもダメだ。そんなことをして、紗南にウイルスを移したくない」
紗南「けんちゃん、もしかして熱あるの?」
健斗「今朝も六度ジャスト!」
紗南「平熱じゃん」
健斗「でも、若者は罹ってても症状でないって言うから」
紗南「へーきだよー」
健斗「家族以外の接触はなるべく避けたほうがいい。おれは、紗南を守りたい」
紗南「めんどくさ」
健斗「さなああああー」
紗南「ま、そういうところ好きだけど」
健斗「さなあああああああーちゅー」
紗南「きもっ」
健斗「さなあああああああああああああ」
紗南「仕方ないなー」
健斗「ちゅー」
スマホがなる音
紗南「ちょいまって」
健斗「さなあ……」
紗南「あ、けんちゃん緊急事態宣言解除だって」
健斗「なんだって!よし、紗南、今から会いにいくからな!待ってろ」
どたどたと出ていく足音。
ドアが閉まる音。
紗南「ちょっ……。もーなにしてんの! パソコンそのまんまじゃない」
通話を切る音。
紗南「ま、そういうところ好きだよ」
健斗「(だんだん近づいて来る)さなああああああああああああ」
紗南「はや!やっぱきもっ」
おわり
(完)
このシナリオを使って収録したボイスドラマです。