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作:大山伸子
人物:
ツトム
りん
ツトムN「ボイスドラマ。我が家は、裸族!」
銅鑼の音。
ツトムN「そう。我が家は裸族。父さんも、母さんも、2つ上の兄さんも。生まれたままの姿でプランプランポヨンポヨヨン、思い思いに家の中を歩いてる。それが普通だと思ってた。断然楽だし。違うと知って」
ツトム「(つぶやく)世界って、窮屈だな」
ツトムN「そう感じた。世間の常識では裸族なんてとんでもない存在らしい。中学生の俺にとって、このギャップ、それは由々しき問題で、もっと困るのは俺に彼女が出来たという事で、危機的なのは」
りん(電話)「ツトム君。近くにいるの。雨が強くなって来ちゃってずぶ濡れ。寄らせて。5分後くらいにつくね」
ツトムN「マ・ジ・や・べ・え。とにかくみんなに服着せよう。全員ソッコー着衣。あ俺もだ。世を忍ぶ仮の姿になるため脱衣所へ。とその前に」
ドアを開ける。
ツトム「兄ちゃん?いねぇ」
ツトムN「手間が省けた。オレは早足で階段を駆け下りる。あぁ全身に微風を感じるこの快感。この心地よさを知らない奴らのなんと哀しい事だろう」
横開きのドア(脱衣所)を開ける。
ドア越しにシャワー音。
ツトムN「脱衣所のドアを開けると、シャワーの音が。ってことは母さんが長風呂の最中か」
ツトム「かあさん?聞こえてる?」
ツトムN「服を着ながら、声を上げる」
ツトム「今から彼女来ちゃうから、出てくるんなら服を着て!服。嫌ならしばらく出てこないで。一時間くらい!頼む」
勢い良くドアを閉める音。
ツトムN「兄さんはいない。残るは父さん。リ ビングには……。いねぇ」
小走りで走る音
ツトムN「トイレの前を通り過ぎて、再び2階へ駆け上がる。なんとなく体が重いのは、きっと服なんか着てるせいだ。ったくこんなもの。書斎のドアを思い切り開く」
ツトム「父さん!」
玄関チャイムの音。
ツトムN「(驚愕)来ちゃった。応急処置だ。スイングの練習をしている父さんに部屋から出るなと厳命する」
玄関チャイムの音。
ツトム「はいはいただいま〜」
階段を駆け下りる音。
玄関のドアが開く音。
ツトム「おまたせ」
りん「ごめんね。突然で」
ツトム「いやいや。ずぶ濡れだね、ちょっと待ってて。タオル持ってくる」
ツトムのN「微笑む彼女の愛らしさ。この笑顔のためだったら、服という呪縛にしばられる事なんか全然たいした事じゃない。良かった。本当によか……」
水の流れる音。
トイレのドアが開く音。
ツトムのN「水の流れる音に続いて、トイレのドアがスッと開く。そして……。アニキが現れた。もちろん、裸族の完全体で。我らが自分らしくいられる姿で。つまりは」
りん「きゃー!」
ツトムのN「すっぽんぽんってこった」
(終)
このシナリオを使って収録したボイスドラマです。