一日目。
タイドラマの世界は、やっぱりというか、そうでありたい理想の姿。
当然だけど実際とは違う。
わかってはいたけど、実際に体感してみての衝撃のデカさったらない。
泊まる事になるホテルはトンタラリバービューホテル。
バンコクの中心部から遠く、BTSの駅からも遠い。
BTSはスカイトレイン。いわゆるモノレール。
立地は便がいいとは言えないらしいが、
歩くのは好きだから3、40分位なんとかなるだろう。
チェックインは朝8時。
ロビーでぼんやり待っているのも無為無策。
バンコクの町並みを体感するため、近くにあるというコンビニへ向かう。
狭く、そしてキレイとは言えない歩道に屋台が並び、おやじやおばちゃんが飯を食い、通勤、通学の人々がのろのろと互いの目的地に向かい交錯していく。テーブルの足下に、薄汚れた中型犬が寝そべっている。
野犬天国と聞いてはいたから、驚かない。
俺はその喧噪に混じって、コンビニへ向かう。
水とパンを買い、初めてこの国のお金を使う。日本で換金した500バーツ一枚を払う。高校生位の少女が無表情に札を受け取り、お釣りをよこし、手を合わせる。
ここは「微笑みの国」ではないのだろうか?
ホテルの受付の対応は感じがいいけど、日本語は通じない。
密かに鍛えた英語力を目に物見せてくれようと思うも、日頃しゃべらないから、とっさに言葉が出てこない。
身振り手振りでなんとか伝えて、チェックイン。
部屋は広い。2人部屋。
16階は最上階で、カーテンを開けるとバンコクの下町が一望できる。
暑い。そして眩しい。結局カーテンは閉めたまま。
コンビニ巡礼の衝撃が強くて、そのまま寝てしまおうかいう弱気に襲われる。
逃げちゃダメだ!
肩がけバックに荷物を詰めかえ、カメラも担いで町へ出る。
BTSの駅へと歩く。
通勤・通学時間を外れたからか、さっきまでのカオスはない。
少しホッとして、町を歩く。
匂いがキツい。香辛料の匂い、油の匂い。生臭いなにか。路上で売ってる魚の匂いか。日本では閉まってる事の多い、ガラガラと上へと上げるタイプのシャッターが、この通りではまだ開け放たれていて、中には、ランニングシャツのおいちゃんが、眠そうな顔でぼんやり外を見ていたりする。
暑い。
日焼け止めを買い忘れた事を後悔しつつ、駅へ向かって歩く。
車もバイクもひっきりなしに通っている。
通りの向こうに渡るには、手を挙げる。
なんてするわけもなく、強行突破がデフォルトらしい。
しれ〜っと車道へ降り立つと、様子を見ながら反対車線を渡って行くのが現地流。
俺にはできない。
信号と横断歩道を探した。
が、信号は赤のまま。動いてないのだ。強引に渡るしかないのだ。そうと気がついていれば、もっと狭い場所で横断したのに、と後悔しても先には経たない。
地元民の影に隠れて、なんとか通りを渡る。
歩いてきた事を後悔する。
命からがらBTSの駅へとたどり着く。
サパーンタクシン駅。
フェリー乗り場が隣接してて、市内の観光名所はほぼほぼ川沿いにある。フェリー乗り場へ向かい、一日乗り放題券を買い、フェリーで川を北上した。チャオプラヤー川。水は茶色で波は荒い。
漁師舟のような小舟から、輸送船まで種々様々な船が川を行ったり来たりする。
フェリーは快適。風が気持ちよく、ようやく少し来てよかったな、という気持ちになれた。
王宮に近い船着き場で降りる。
王宮前は観光客に客引きに、警備員にとごったがえす。
なんとなく京都の三十三間堂あたりの雰囲気に似てるかなと思う。
王宮とワットプラケーオを見学。
金閣寺も真っ青な、大きな金色の尖塔は一見の価値あり。ちゃんと150バーツ払って入って良かったなと思う。
日本ならロープで近づけないようにしてそうだけど、その辺はアバウトで触ろうと思えばペタペタ触れる。
もちろん自重したが。
そのまま歩いてワットポーへ。
よく写真に出てくる寝ている仏様のいる寺院。
標準レンズでは、とても収めきれない横幅で見応えある。
中国人らしき家族連れに写真を撮って、と言われ撮ってあげた。
ダメだし。
バストアップで撮れと言う。
注文の多いお客さんですね、と思いつつバストアップで全員入れてあげた。気持ちよくサンキュー。ユアウェルカムと挨拶を交わす。
ターティアンの船着き場前でバンコク初屋台。
これはなに?とデカい串揚げの山を指差した。
「脇に置いてある川海老よ」的な事を言われた俺は即買い決定。甲殻類ラブ健在。
衣は剥がれやすいが、身はぷりぷりして、しかも大ぶり。
旨い。
船着き場で3バーツ払って向う岸のワットアルンを見学。
偶然にも、この日はタイのお祭り「ロイクラトン」
大輪の花を丸めて作った灯籠がそこかしこで売っている。
こうしてバンコク3大名所をサクリと制覇。
なんとなく歩いてタイ国鉄のファランポーン駅を目指して、道に迷う。
暑い。
水やコーラが死ぬ程旨い。
車道を横断するのは、パズルゲームのように難しい。
ファランポーン駅をチラ見して、今日の所は勘弁してやる。
MRTに乗って、サイアムへ。トンを探しに行く。
トンはタイ映画「ラブオブサイアム」の登場人物。MRTは地下鉄。
地下鉄の券売機はタッチパネル。近代的。でも惜しい。
判定が甘くて目的を選択するのが難しい。
何度も人差し指で画面をプッシュした。
切符の代わりに現れたのは黒いコイン。
入れて使う物ではなく、かざして使う。
ようはスイカと同じ。
でも、降りる時は入れる。
かざして、入れる。
サイアムについた。
ホッとした。やっと知ってるタイに来た。
サイアムパラゴン。
まぁ渋谷新宿にある駅ビルのような物。
lovesickやらhormonesでも年中でてくる定番の遊び場。
見てまわって面白いものがあるわけでもないが、自分のライフスタイルの文法が通じる場所に来ると安心する。
そのまま、日が沈みきらないうちに、チャーン運営のビアガーデンへ。お一人様。
なんとなく「これ!」って指差した物が3リットル入りのタワー型ビアサーバーで驚愕。
ライブを見つつ、ビアガールにまめまめしくお酌をしてもらいながら、気持ちよく飲む。
湿度が高く。野外で飲むチャーンは水の様にゴクゴク飲むのに適してる。
ビールは土地に合わせて特化していく飲み物なんだと実感。
言葉も通じぬ異国の町でガッツリ酔いつつ、ホテルへ戻る。
BTSでサパーンタクシン駅からフェリー。
ホテル近くの外国人向けナイトスポットアジアティークまで無料フェリーで行ける。
そこから歩いてホテルまで10分。
使わない手はないだろう?
酔いに任せて、朝のコンビニ巡礼の途中にあった屋台でロッティーというお菓子を頼む。
なかなか旨い。
ホテルのベッドに倒れたら、目が覚めた時には朝が来てた。