ショートドラマ:ある氷河期世代の意地 高石あさ美 インタビュー

「全部1人でやってきた世代」だからこそ、後輩にどう接していいか分からないのかも

「令和の今に日本という国で働くという事」をテーマに制作された3本のショートドラマ。ここではキャストの言葉を通して、各作品に込められた働くことへの想いを紐解いていきます。今回は「氷河期の『意地』」で、不遇にめげず生き残ってきたベテラン会社員「香織」をリアルに演じた高石あさ美さんに、出演にあたって考えたことや、お仕事のエピソードなどをうかがいました。

動画インタビューはこちらから


――今回演じられた「香織」役のオファーを受けたときは、どんなふうに感じられましたか?

香織さんは就職氷河期の世代多分ど真ん中、今40代半ばぐらいの設定ということなので、私よりはちょっと上の世代になるんですよね。 面白い役だなと思いつつも……正直、私自身はそこまでの大変な思いをした世代ではなかったので、きちんと香織さん世代の方々の思いが伝えられるかなというのは、ちょっと不安な部分があったりもしました。ただ、やっぱり同世代といえば同世代なので、かなり身近な存在なのかなというのは思いましたね。

――高石さんは役者であると同時に、会社員としてもお仕事をされているということですが、働き手として香織さんにシンパシーを覚える部分もあったりしますか。

そうですね。私の場合はそれほど大きくない会社で、その中でも小規模な部署にいまして。後輩とか部下を直接教えなきゃいけないシーンっていうのがあんまりなかったもので、たまにそういう役目が回ってくると、どうやって教えていいか分からないということがあったりして。香織さんもそうだと思うんですけど、全部1人でやってきたような世代ですので、今の、世代の違う新人の扱い方が難しいと思ってるのかなと。

――転職を重ねてもなかなか境遇がよくならず、なんとか抜け出そうと、誰に教わるでもなくスキルを身につけて……という人も珍しくない世代ですからね。教わっていないから、教えられないといいますか。そんな中で、香織さんは経験豊富な世代ならではの“スキル”を後輩の早瀬くんに伝授しつつ、ちょっとだけ無念を晴らすわけなんですが、高石さんがお仕事をしていて気持ちが晴れるのは、どんな時ですか?

「わかりやすく結果が出る仕事」って、なかなかないと思うんですけど、地味なところとかでも何かやったことを、直接その仕事に関係ない人が実は見ててくれて、「あれ、よかったね」とか言ってくれたりすることがあると、「ああ、ちょっと頑張ってよかったかな」っていうふうには思いますね。

――光の速さで成長したい早瀬くんがその境地に辿り着くには、まだまだ時間がかかりそうですね(笑)。ところで、撮影の際の印象的なエピソードなどがあれば、ぜひ聞かせてください。

お寿司屋さんのシーンの細部の作り込み方ですかね。お皿にお醤油が少し残った感じとか、お茶の濃さとか、最終的に本編には映らないかもしれないところまで制作チームの皆さんが丁寧に準備されていて、こういうところが作品全体の仕上がりにも関わってくるんだろうなぁと印象的でした。

――高石さんはスタジオランチボックスの前作「今日のスイーツに感謝を~暮林高校男子スイーツ部」でも、主人公たちに発破をかける先生役で参加されていますが、いろいろな現場に入られる中で、スタジオランチボックスの特徴はどんなところだと感じていますか?

スタッフさんもみなさんすごい和やかで、温かい現場だなって。撮影が押してもピリピリしないし。

――監督自身が現場で「押してますねぇ~」とか言って笑ってますからね(笑)。

映像作品の経験があまりないので、カメラの映り方とかも全然分かってなくて、多分監督もいろいろ思うところがあるんじゃないかと。それでも辛抱強くやってくださってありがたいです。

――いやいや、「氷河期の『意地』」での高石さんは、「等身大というか、実際に会社員として働いていらっしゃるのもあるのか、リアル感がある」と監督もご機嫌でしたよ。

そうですね。舞台では隅々の席まで届けないといけない分、声のお仕事は体を使って表現しない分、どちらもお芝居が大きめになる部分があったりするので、映像ではよりナチュラルなお芝居の方がいいというのがだんだん分かってきました。「今日のスイーツに感謝を~」の先生役は、どちらかというとちょっとコミカルで、舞台っぽいお芝居でもそれほど違和感がなかったんですが、今回は本当に等身大な感じがいいかなと思って、「やり過ぎないように」というのはちょっと意識しましたね。

――映像ならではの演じ方も見えてきたところで、今後やってみたい役などはありますか?

映像で「普段の自分と全然違う役」をやるのは、舞台や声の作品より難しくなるとは思うんですけど、あえて自分と違う、すごくはっちゃけた役とか、すごく暗い役とかもやってみたいですね。

――最後に、高石さんおすすめの「氷河期の『意地』」の見どころを教えてください!

今回制作された「氷河期の『意地』」と「ある若手社員の『焦燥』」、そして「会計難民・予約難民 ある医療事務の『誓い』」の3作品がそれぞれ、微妙にリンクしてるっていうのがニクいなぁっていう。ぜひ全部観ていただいて、「ここにこの人いるんだ!」みたいなのを見つけていただけたら、より楽しめるんじゃないかなと思います。

取材・文 丸田カヨコ
SNSアカウント X:@kayoko_maruta

髙石あさ美プロフィール

会社員として働く傍ら、舞台、外画吹替、ナレーション等、役者としても活動。次回出演は朗読パンダ第10回公演「飼育員、コロッセオに立つ」2025年8月29日~31日 於あうるすぽっと。

SNSアカウント X:@asami_hazuki

本編はYoutube他、各種SNSにて配信中