2014年10月放送の「もて声倶楽部」に提供したボイスドドラマ用のシナリオです。

朗読劇、ボイスサンプル、劇としての上映、映像化、オーディオドラマ化、YouTubeの動画のシナリオとしてご利用いただいて構いません。
特にご連絡いただく必要はありませんが、作品として公開されるのでしたら、教えてくれたら拝見させていただきます。

※著作権は放棄していません。
※シナリオそのものを配布したり、販売するのはご遠慮ください。
※こちらのシナリオを利用したことによって生じた不利益等には保証を行いません。
※商用利用の場合は、お手数ですがご一報いただけると助かります。

人物
将馬 (しょうま・16)

栄太  将馬の父
真奈美 将馬の母

※○○は、将馬役の役者が自分が中学一年位の頃に見た(流行ってた)映画でいいです。
※「父さんは、少し(寂しそうに)笑った」()の部分のニュアンスを入れて読んでくれると嬉しい。聞き手に手放せてラッキーとオヤジが思ってる、と取られないように


将馬(MO)「あしたオレはこの家を出ていく。母さんと一緒に。父さんを残して。何度聞いても、別れる理由が判らなかった。派手な喧嘩は見た事ないし、浮気とか、不倫とか、そんな事でもないらしい。「これ以上一緒にいられない」溜息と共にそう言った母さんが、ものすごく疲れて見えたから、それ以上理由を聞くのは止めた。母さんに付いていく。二人の前で宣言すると、父さんは、少し、笑った。たぶんオレの気のせいじゃない。その日から一ヶ月、この部屋からは少しづつ、少しづつオレの物が消えていった。残っているのは机の上の教科書と、聞かなくなったCDが少し……。教科書をまとめてダンボールの中に放り込んだ。手を伸ばし、棚の上のCDを数枚まとめて掴んだ。勿体つけるように、一枚一枚、ダンボールの中にCDをしまう。ネットで落とせるようになって、CDとか全然買わなくなったから、どれもこれも、なんか懐かしい感じだ」

将馬「ん?」

将馬(MO)「思わず手が止まった。○○のサントラ。オレが……、生まれて初めて買ったCD。中学の時、父さんと一緒に見た映画。めっちゃハマって、パンフとか、下敷きとか、グッズ片っ端から買い集めた。確かこれは……、誕生日プレゼントで買ってもらったんだっけか。……。オレは、そのサントラを机の上に置くと、ダンボールの蓋を閉めた。オレの居場所が、この家から消えた」

 (間)

栄太「これで全部か?」
将馬「うん」
栄太「行くか」

将馬(MO)「父さんがトランクを閉めた。母さんは朝一で出て行ったから、駅までの十数分間、車内はオレと父さんの2人きり。エンジンが低い唸りを上げ、車は走り始めた。チラチラと父さんの視線を感じたけど、オレは無視して窓の外を眺めてた」

栄太「将馬。最後だから」

将馬(MO)「頑張れよ、とか、母さんを助けてやれ、とか。そういうの今聞きたいわけじゃない……。そう思って、オレはショルダーバックから出したCDを、カーコンポの中に押し込むと、プレイボタンを押し、ボリュームを上げた。聞き慣れた○○のメインテーマが車内を満たす」

真奈美「母さんも一緒に見れば良かった」

将馬(MO)「あの日、そう言って母さんは笑った」

栄太「続編は3人で見に行こう」

将馬(MO)「あの日父さんはそう言って笑った。あの日はみんな笑ってた」

栄太「面白かったな。……。この映画」

将馬(MO)「答えなかった。声が震えてしまいそうで。それは絶対、嫌だった」

                  完