オーディオドラマ幸世の失恋酒場第一話『海賊カット』を執筆した中庭順子です。

この《幸世の失恋酒場》は、仲井美樹さんの「こんなのどう?」という提案から始まり「いいよ~。面白そ~」と、企画会議の中で生まれたもの。
そして『海賊カット』は、ライターの一人として、年齢、酒、酒場……と他のライターさんとかぶらないように設定していき、出来たものなのです。

私が初稿で書いていたタケルは、とことん嫌な奴。幸世が、変な男に捕まって、痛い失恋をするというもの
仕事もできて、そこそこ美人でも、若いころには、こんなどうしようもない男に失恋をして、恋のお勉強をしてました。
と、いう設定にしたのですが、高橋さんは、「これじゃあ、タケルは、ただの異常者ですよね」と。

そうです。ほぼ異常者として書いていました。
「幸世に物語があるように、タケルにもきちんと背景を描いて欲しい(多分こんなニュアンス)」との依頼に反省しながら、タケルの物語を考えていったのでした。

人に何かを伝えるときに、薄っぺらな話では、心に響かない。奥にある何かをチラリと覗かせながら、奥行きと、味わいをつけていく。
わかっていたはずのことを突き付けられたようでした。


私が書いた一九歳の幸世は、成人式を迎えて、二十二歳ごろ、タケルに再び出会います。
あんなにひどい目にあったのに「タケルは、夢を捕まえに行ったんだ。海に」と、少し大人になった幸世が呟くところ。
そこなんです。
幸世が結婚できない理由

各ライターさんと打ち合わせをしたわけじゃないのに、皆さん、幸世のそういうところ、つまり、どんな男も許してしまうところを書いている。
そこに気づいたとき、なんだか、凄いなあと感動しました。
空想で作り上げた一人の人物について、カラーが違うそれぞれのライターさんが、しっかりと汲みとって描いているのです。

自分だけではなく、他のライターさんが書いたものも含め、好きです。幸世。
正確には、幸世がだんだん形作られてきて、好きになっていきました
さおりさんの声も幸世の一部。オーディオドラマの収録をしている時、いつも感じるのですが、文字でしかなかった物語が、声優さんに声を入れてもらった途端に、立体化して、その姿が見えてくるのです。

スタップ細胞ではありませんが、幸世はいます!(笑)
今回もさおりさんがそう思わせてくれました。

タケルは、初稿のタケルよりも、最終稿のタケル。
そして、米澤さんが声を、命を吹き込んでくださったタケルがいいです。

出来たら、幸世の失恋話がもっと聞きたいです。
そして、子供の頃の幸世のエピソードなどもあると楽しいなと思います。
最後に、ちょっと呟いちゃっていいですか?

「幸世、今頃、どこでどうしているのかな?また、変な男を捕まえてなきゃいいんだけど。懲りないからね。あの子」

それでは、また次のお話しでお会いしましょう。


執筆ライターへ質問

幸世はだいぶ痛い目にあってますが、先生方の体験談でしょうか?
私、残念ながら、美容師さんとも、海賊、いや漁師さんともお付合いしたことはありません。成人式は、地毛で結ってもらいました。

幸世を幸せにできるのはどんな男だと思いますか?
先ほども書きましたが、幸世には振られた男を許してしまう心の広さがあるんです。そして、自分からわがままを言わない。なので、あの幸世がわがままを言えて、許せないほど心を揺さぶられるが人がいいのかなと思います。

子供っぽさがあるタケル、酔うと変わってしまうタケル。思い描いていたタケルになれたでしょうか?
思った以上のタケルです。ありがとうございます。